業務プロセスの課題の一つとして、ソフトウェア・アプリケーション開発において進むオフショアリングにおけるコミュニケーションの改善があげられます。これは、気持ち良く仕事をするための要素などという単純なものではありません。オフショアリングにおけるコミュニケーションの巧拙が企業経営にもたらすものは、生産性と経営品質の企業間差です。
IPA人材白書2013によると2011年度のオフショア開発実績は全体で約32%(従業員100名以下: 13%)という数値です(国別状況は右図参照)。オフショア開発.comによると、問い合せ実績1位はベトナム(60%)が、2位の中国(15%)を大きく引き離している状況とのことです。
オフショア開発における課題としては、コミュニケーションギャップの割合が個別の項目では最大になっていますが、その他の項目も、異文化コミュニケーションを含む諸々のコミュニケーションの巧拙に起因する部分も大きいものと推測できます。右の円グラフ項目のTop 4項目をコミュニケーションの問題とすると、実に62%が該当します。
オフショア開発の流れは、コストの観点からは避けて通れない中で、比較的歴史がある中国ベンダーはコスト的メリットを失いつつあり、他国への展開も考えないといけない状況があります。この場合、日本語オフショアの限界についての指摘もあります。出展:「2030年IT化する企業と日本のIT産業の姿」野村総研
以上のような観点から、国内における業務と同等以上の成果を生み、継続的に企業力を発揮していくには、英語でのオフショア開発を含め、コミュニケーション・スキルの向上が経営戦略上の重要な課題になることがわかります。これを、単に業務委託先である海外企業のスキルアップに依存し続けるのではなく、本社機能の役割再定義とそれにあった業務体制、すなわち業務プロセスの再構築がポイントです。
オフショアの発注者とベンダーとの間のギャップの例を見てみましょう。下表の調査結果(抜粋)を見てください。これによると、商習慣や仕事に対する考え方などに起因する、伝える意識と聞く姿勢の行き違いが問題を生んでいる状況が見えてきます。
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これまでの国内委託先への業務発注においては、あいまいな要件定義でも、発注先の技術者によるニーズと要件定義の行間解釈による、「あうんの呼吸」で事なきを得ていました。このスタイルを、そのまま海外企業に持ち込むためには、高いスキルをもつ委託先企業とそのブリッジSEに頼るのが、最も効果的な選択肢でした。
スキルフルな現地企業やブリッジSEの確保は、資金力の弱い中小企業には難しいのと、ベトナムなどの新興国では、そのような実力をもつ企業や人材の絶対数、そのものが少ないといえます。したがって、今考えるべきことは「ブリッジSEに頼らず、ベンダーを選ばないアウトソーシング体制の構築」です。
以下のようなコンセプトで、業務プロセス(企業内の一つまたは複数の組織や社員の活動が付加価値を生み出すしくみ)を見直すのが最も有力な手段の一つです。
このような、社内の業務プロセスをインプットとアウトプットの連鎖で表現し改善対象にすることを、業務のフレームワーク化と言います。これは、組織やグループなど仕事の活動単位と、一人一人の業務の役割を定義することにほかなりません。
業務プロセス再構築の本質は、業務プロセス全体を、会社としてのアウトプットを実現するためのサブプロセスの連鎖として構築しなおすことと、そのアウトプットイメージの具体化にあります。
日本の企業には、業務プロセスづくりを専門的に扱う職務を設けているケースは極めて少ないため、どうしても中途半端な業務フローや役割・責任体制になりがちです。また、成功体験のコアコンピタンス化や市場環境の変化に関する掘り下げも不十分で、タイムリーかつ有効な業務プロセス構築ができていないのが現状です。
当事務所はビジネスプロセス構築の専門家として、クライアント企業様の実体や業態に合わせて、現状プロセスの課題洗い出しから、新しいプロセスの定着までご支援します。