スティーブジョブズは良い製品を生み出すための会社の仕組みとは?と問われて、「イノベーションは仕組みから生まれるのではなく、毎日切磋琢磨して、少しでも良い製品を生み出そうとする人々から生まれる」と答えたそうです(スティーブジョブズ驚異のイノベーションより)。
では、中小企業の限られたリソースの中で、切磋琢磨する人材とチームはどのようにすれば生まれるのでしょうか。一つは、有能な人材を採用することですが、それが一番難しいことは経営者であれば皆さんご存じです。その次に大切なこと、いや有能な人材を採用以上に会社にとって大切なこと、それは採用した人材が、会社と一緒に成長してくれることです。そのための一つのヒントをここで紹介します。
仕事のサイクルを「観察・分析」→「発想・学習」→「デザイン・試行」→「提供・検証」の四つの役割に分けて考えることで、全体的視野を養うための非常にシンプルですが、極めて効果の大きなメソッドです。
企業全体の組織作りから人材育成まで幅広く活用できます。
チームや組織の成功に自分の力をどう活かすか、その過程をとおして自分も成長する、その考えがシンプルで協力なワークモデル経営に繋がっています。
少し遠回しですが、当社が提唱するワークモデル経営が目指すものをシンプルに説明します。
2018 FIFA WORLD CUP Russia
西野監督率いる日本代表は開幕前の低評価を覆して16強入りを果たし、多くの国民が熱狂しました。その分、日本チームの敗退シーンが脳裏に残っている方も多いのではないでしょうか。
ベルギー戦の敗退シーンから得たヒント...
あと一歩での勝利を目指し、アディショナルタイム(4分)を攻め続ける日本は、本田圭佑選手の蹴ったコーナーキックを奪取したベルギーのゴールキーパーを起点にした9秒足らずの雪崩のような攻撃で見事なゴールを決められてしまいました。
「何が足りなかったんでしょうねぇ」
試合後のインタビューで、西野監督は「何が足りなかったんでしょう」と自問していました。日本の選手の能力も監督やチーム全体のスキルも世界レベルに近づいたと思っていた。この試合で、何か目にはみえない、大きなギャップのようなものを感じていたのではないでしょうか。
「ピッチの中では、点を取るための一人ひとりのインスピレーションが全体として調和する必要がある...」
後に、元全日本監督(現今治FCオーナー)岡田武史氏は、ヨーロッパサッカーにおける「プレーモデル」を紹介して、このような意味のコメントをしています。
ヨーロッパサッカーには、16歳までにサッカーの共通原則を叩き込み、その後は自由を与えるそうです。どのようなスター選手でも、いざというときの価値基準・行動原則が共通である限り、お互いの信頼関係の下でチームとしての勝利に向かっていけるというものです。
企業経営も同じではないでしょうか。社員の能力は高いが、組織もメンバーも個別最適で物事を判断し行動している会社と一人ひとりの能力はそれほどでもないが、お客様のためには皆一丸となって、夫々の持ち場で最善を尽くす会社、どちらが付き合い続けたい信頼できる会社でしょうか?
一人ひとりが自分の利益を追求するために足を引っ張り合う職場と、一人ひとりは自分の能力を発揮しているが、いざというときの判断基準が「For the team」の職場、どちらが働きやすい職場でしょうか?
組織・社員一人ひとりの仕事に対する価値基準や行動基準が共通なチームはいざというときにすごい力発揮します。同時に一人ひとりの「For the team, for the customer」プロフェッショナル意識が個としてのやりがいや成長につながります。
ワークモデルは、業種や業態、職業によらない仕事の基本形のようなものです。いわば、ビジネス活動のエッセンシャルな要素をモデル化したものです。会社や店舗レベルの仕事はもちろん、会社の中の部門、その中で働く社員一人ひとりの仕事に対しても適用できます。対象となる顧客は社外でも社内でも適用可能です。
ワークモデルは極めてシンプルです。お客様にとっての価値と課題解決を目的とし、自らの知識や経験、パートナーと共に解決策を考え、どのように工夫したらお客様の期待に応えられるかを試行錯誤して成果を提供すること、そして成果の価値を常に検証することで、次に活かすという仕事の循環性をモデル化したものです。
このことは、ある人にとっては当たり前のことですが、別のある人にとっては考えたことのないことだったりします。つまり、一人ひとりの個人特性に任せておくと、仕事に対する価値観や行動基準は一人ひとりまちまちになり、強いチーム力は期待できません。
限られた経営資源とくに人材を最大限に活用する必要がある中小企業経営者にとって、まちまちな一人ひとりの仕事に対する価値観と行動基準をビジネスの勝利に向けて一つにすることは、これからの経営では大きな武器になります(ワンチーム経営)。
特に、コロナ禍でのテレワークを採用している企業では、平時は「職場」というなんとなくでも一体感を作っていた環境が無くなり、ネットでつながる「バーチャル職場」では、仕事に対する価値観の拠り所がありません。こんな時は、一人ひとりが全体を意識して、自律的に仕事をする意識を作ることこそ、チームを一つにする鍵になります。
ワークモデルメソッドは、それぞれのミッションを元にして、会社の仕事→チームの仕事→一人ひとりの仕事 という流れで、同じモデルを使って考えます。これにより、一人ひとりの能力や個人特性が、チーム力そして企業力に繋がるという好循環を生みます。
モデルがシンプルで、誰にも分かり易い思考パターンに基づいているので、一旦使い始めると、意識の中に残り続けます。チーム全員が共通の思考パターンを持つことの価値を是非体験してみてください。